トップページ 吉本隆明と語る Talk-1心的現象論刊行の体制について
山本: 今日は経過報告にまいりました。
吉本: それは、是非お聞かせ願いたいですね。
山本: 実は、このシステムを始めましたのは、われわれ著者の側、研究者の側、表現者の側にとって、要するに理想的な生産と出版の生産と分配と流通のメカニズムをつくるということでこの間やってきたのですけれど、やはり、所詮ですね、印刷会社は印刷会社でしかない出版社機能がもてないという結論で、今に至ってきておりまして、今日ご報告をかねながら、ご判断をうかがって、結論的には、我々としては、発売元をかえたいということです。

発行元は文化科学高等研究院出版局ですが、発売をかれらに委託して、こちらに資金がないものでしたから、向こうの方に資金を提供いただいて製作し、同時に利益をだしてあげようじゃないかと、構成したのですが、その結果、実際は、愛蔵版はネットで37冊、書店で4冊、合計41冊売れました。これは8月31日締めです。そして、普及版の廉価版のほうはネットで53冊、ジュンク堂がブックフェアをやってくれたりして、書店では、85冊、合わせて138冊です。これは、私にいわせるとこんな少部数の売りのはずではない、もっとうまくやれば売れるはずです。

吉本: いや、ぼくは、今、それを聞いて、その数は思っていたより多すぎるんじゃないかと思うんですよ。やっぱり、出版状態、その他一般のことは、皆さんのほうがよくご存知だろうと思うんだけど、僕はしょっちゅう、代えて商売してきるから、それなりにあれすると、日本の現代、特に、文化ということに関する、出版、その中で特に、読むのは七面倒だと若い世代の層は、そういう傾向はますます強くなっている、そういう状態になっている中で、そこを考えなきゃ無理じゃないかって、僕はそういう風に思ってきましたけど。ただ、山本さんたちのやりかったっていうのは、興味があるから、勝手な言い草ですけど、だから、そういう風に考えて、そういう試みをするとどういうことになるかみたいな、そういうことは知りたい。僕の予想では、ちょっと多すぎるんじゃないかな。

今は日本の出版界っていうか、そういう書籍を作って販売するっていう分野は上から下までっていうか大から小まで、ひでえもんだっていうくらいひどい状態ですね。なんか、丁度、景気不順の状態が丁度一番今、そういう文化的な、特に文学なんか、なんですか、もう、ジャンルとしてもう崩壊じゃないかと思われるほどだめですね、そういう状態だから、今、おっしゃったようなくらいなら、そんなに失敗じゃないんだなぁっていうのが聞いた感想です。

山本: そうですね。
吉本: もっとだめだろなと予想していながら、それを黙っているっていうのはよくないことなんですけど、これからは、やりようがあるってことを含めていえば、それは、とてもいい、試みとしては大変貴重な試みじゃないかなぁっていうふうに思いますね。それだけ達している現在なら、現在の日本の状況からみて結果はいいんじゃないかって、そう思っています。思ったよりはそうじゃない結果がでたって感じをもってますって感想ですね。僕自身は山本さんたちが出している本、また出された自分の本でそんないいかたおかしいですけど、また、いまね、僕も読んでいるんですよ。読んでどうするのかって、いったら、わかんないですけど、もうすこし、これいいようがあるんじゃないかって、詰めて凝縮するとどういう風になるもんかなっていうことを知りたくて、また自分で途中まで読んでます。

それで、読んだ感想は、よくやってんじゃないかって、感想ですね。自分でもって、ここまで考えたかって、という感じがして、だけど、やっぱり、散漫だっていうか、まあ、同人雑誌だからっていうこともあってか、もう少しこの問題を凝縮して、はっきりさせていくことができるよなって、いう感想をいま自分なりに読んでもちました。それから、山本さんがこの前のときに言われた、そのやり方からは出てくるだろうなって思ってきいておりましたけど、序文を書くということですが、解説っていうのはおかしいけど、中身のことについて書いていくことも、だいたいぼくは半分以上読んでからやりたいですけども、もう少し、凝縮して、自分でこういう意図で、こうやったっていう、そういうことをちょっと付け加えて、お渡しできるなぁって風に概略ではありますけど考えてます。僕もいまお聞きした、それに対して、これからもやるべきことっていうのは、そのくらいのことで、もう少し時間があれば、お渡しできると思うんですが、序文というか概略考案っていうか、こういう意図でこういうふうにやったんだっていうことをお渡しできるんじゃないかと思うんですけど。

山本: ありがとうございます。それで、実際に、ここで何が起きているかといいますと、まず編集で高橋輝雄が3ヶ月か4ヶ月かけて、原文も全部チェックして、照らし合わせやりました。この意味を印刷所だけでない、出版社さえもわからなくなっている、編集制作があってこそ成立しうるのであって、ただ右から左へ字をうつせばいいということではない。資料集ではないのですから。

また、このたびの出版刊行は、理念・ビジョンが確固とありますが、実際にはビジョンの意味が転倒して、要するに、ビジョンが規則になってしまうことがおきます。たとえば、ネットで販売するという分配上の転化をはかるビジョンがある、東販・日販の流通支配システムをこえることですが、そのビジョンをシステム化して現実過程に入らなければいけない次元で、現実との折り合いはつけていかねばならない、書店なし流通なしといきたいけれど、一挙にはそういかない、この新しいシステム化の媒介として、吉本さんの本を何故選択したのかというと、それぞれの書店におけば、必ずだいたい、われわれの読みだと、10冊ぐらいはうれるはずです。ジュンク堂だけで30冊を超えていますので、それを各県ごとにきちんとやって、ネットのコアをつくりながらネットの客のほうに組み立てを集約していく。こういう過渡的な、ビジョンをビジュアル化する手続きをとってこそ、理念の現実化できるのですが、ネット販売だからネットだけだいいんだと規則化してしまう。流通で半分近くもっていかれますから、商売がなりたたないとしない、そういうなら、書店用の価格を別立てしてしまえばいいのに、それは社会的にゆるされないとか、儲けと社会規範とが優先されてしまう。

そこで、私自身がジュンク堂へいって口座を開拓し、私が丸善へ行ってと、著者として初めて書店回りしたんですけど、回路をつけて、尻を叩いてつれていくということです。広告もわたしがつくって自分で打っています。企業化された構造は、社会一般的になっていて、新しいことをしようと言っているところでも、「しない」ことが「する」ことになってしまいます。これじゃだめだ、先の展望が見込めない。吉本さんのこの本の情報がとどいていない、ここをどう開いていくかの課題です。そこで、一定程度の1000部か2000部のオフセットの普及版を過渡的につくることだと考えます。そのための資金が良状態でいくと1500万くらいかかる。それをしないので、私から資金調達にはいりまして、なんとかめどがたちました。それで、次のステップに入りたいということなんですね。

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