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在庫がなくなりました 
2014年3月31日発売 
128頁 
定価:本体1,800円+税 

●なぜいま、「太陽の石」なのか
 メキシコの詩人オクタビオ・パスは、1914年メキシコに生まれた。今年は生誕百年である。ノーベル賞受賞者であり、スペイン語圏を代表する詩人、文学者であるが、日本ではまだあまり知られていない。
 本書で紹介している長編詩「太陽の石」は、1957年に発表された。この年には、パスにとって転機となる大きな出来事が三つ起こっている。一つは、評論「Las peras del olmo(楡の木に梨)」(メキシコ国立大学出版)の発表で、表紙には歌麿の美人画が載った。二つ目は、松尾芭蕉の『奥の細道』のスペイン語版「Sendas de Oku」の完成。三つ目は、長編詩「太陽の石」の成立。いずれにも、日本や東洋趣味が強く漂っているのだ。
 パスのオリエンタリズムは、浮世絵や書画、骨董のそれではなくて、俳諧、連歌のほうに顕著だったが、当時のメキシコがアメリカやヨーロッパを理想の中心として仰ぎ見る時代であったこと(これは、ノーベル賞受賞演説でパス自身が述懐している。曰く「いいものはすべて外にある、出かけて持ち帰らなければならない。」)を考えると、日本やオリエントを前面に出したこれらの作品の発表が、実に異端児的行為であったことだと想像できる。
 しかしそれは、奇を衒った行為でも何でもなく、パスが全世界を経巡った挙句に到達した、つまり価値転換した彼にのみ見えた、メキシコのもう一つの顔であった。

 「太陽の石」と同年に発表した、スペイン語版『奥の細道』については、後日、共訳をした林屋永吉氏が興味深い〈パスの俳諧論〉ともいえる話をされている(本書に掲載されている)。かの有名な「閑さや」を、最初のQuietudという直訳語から、少しのちにTregua de vidrio という、文字通りに訳すと「ガラスの休戦」という言葉にパスが変更したというのだ。自分流のイメージの世界ですでに俳諧を自家薬籠のものとしていたことがわかる。自らヨガの実践者として、禅の精神にまで体を通して近づいていた人らしく、芭蕉の精神を自分なりに掴んでいたのだろう。

 『奥の細道』と「太陽の石」が重なり、しかもそれはパスの人生の大変動ともつながっていた。それはつまり、ミクロコスモスとマクロコスモスとの重なり、反対物の合一というシュールレアリズムの芸術が、最もメキシコ的な様式美をもって姿を現したといえる。そして我々も1987年に、パス宇宙の大転換に連なっていた。こうしたことから、今回「太陽の石」の邦訳を出すことに繋がった。

コーディネーター 阿波弓夫(あとがきにかえてより抜粋)

 書籍内容
▼太陽の石 オクタビオ・パス
 注釈 オクタビオ・パス

▼オクタビオ・パス生誕百周年に寄せて
▼オクタビオ・パスの「太陽の石」 エリア・ソーサ・ニシザキ
▼精神圏の巨歩の旅人 大岡信
▼パスの庭で 大岡信

▼常軌を逸した東洋通 ドナルド・キーン
▼パスとSendas de Oku(『奥の細道』) 林屋永吉
▼詩人の美術館 テオドロ・ゴンザレス・デ・レオン
▼オクタビオ・パスの未来 ガブリエル・サイード
▼オクタビオ・パス主要作品略年譜
▼あとがきにかえて 阿波弓夫
▼謝辞

 著者プロフィール
オクタビオ・パス Octavio Paz (1914-1998)
 現代ラテンアメリカを代表するメキシコの詩人、批評家、外交官。創作活動は多岐にわたり、19 歳で発表した詩集『野生の月』にはじまり、詩集、詩論、評論を多数発表。1990 年にノーベル文学賞を受賞した。

【訳者】
伊藤昌輝 Masateru Ito
    ラテンアメリカ協会副会長、元駐ベネズエラ大使
三好 勝 Masaru Miyoshi
    在日メキシコ大使館翻訳官
阿波弓夫 Yumio Awa
    亜細亜大学、法政大学など非常勤講師、フリージャーナリスト
田村徳章 Noriaki Tamura
    パレス編集センター取締役、元毎日新聞東京本社編集局
松山彦蔵 Hikozo Matsuyama
    毎日新聞社弘前通信部長
後藤丞希 Shoki Goto
    メキシコ国立自治大学外国語センター教員
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