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2021年5月発売 
128頁 
定価:1,650円(税込) 





 真正の医療はほんとに少ない。
 産業社会は、ほとんど「医療化 medicalization」されて、医療ではないことに関与し、経済や統治や道徳にまで「医療」に無関係な医療化が浸透してきたのが産業文明である。人々も医療がすべてを解決してくれると信じこんでしまっている。コロナ禍で、医療の重要さと転倒との双方が露出している。規則設定や政策は「社会医学」さえからも遠のいてしまう。
 すごくシンプルな事実。病や痛みそして死は、「自分自身」のことでしかない。自分は自分の一つの病を、いろんな形でなしていきながら、生き、そして死していく。自分の心身の「痛み」は誰も理解不可能である。想像で理解し、身近な他者が心配し、それを気づかってくれる。でも、病気しているのは自分である、痛いのは自分である、そこに、「自律性」の根源がある。Suffering=苦悩は、自分の自分への関係である。それを、自分に沿って助けて、癒してくれるのが、真正の医療行為である。それは、1対1でしかない「限界」にあるゆえ、非常に貴重で大切なことである。(わたしは真正の医療行為を信頼するが、「医療化の独占」を全く信用していないのも「わたし」を診ていないからだ。)
 パンデミックは環境のことであり、また「社会」のあり方において対処されるが、画一の社会統治技術で対応できることではない。自分は手を洗い、うがいをし、大きく酸素を吸い込むことしかできない。ウイルスも人間や動物が「生きていてくれないことには自らも生存できない。退治はできない。「感染」への基本的な理解・考えの指針を山本先生から示していただいた。
 病気を除去しようとか、痛みを殺そうとか、死を無くそうとかはできないこと。そこへ、治療、鎮痛、延命として医療化は関与してきたが、それらに依存するほど、人々の自律性は麻痺していく結果を生み出してしまう。医学的処置が、医療化においては、病気を生み出す「逆生産」が起きる。感染する人もいれば感染しない人もいる。人によって違う。病の一掃・撲滅はありえないゆえ、いかにそれと付き合うかが、大事な事になる。
 産業社会的な仕方では機能しないことがあちこちで多発してきた。何が、「自分に」大切なことであるのか。一人でも癒して(cure)あげたいという強い使命感を持ち、真正の医療行為をされている、「真の医師」の赤星、坂井、西野先生のお三方に、この時勢ゆえ、本来の医療とはいかなることであるのか明示すべく、ご教示ねがった。「個」としての患者、その個的全体へ、自身の高度な医学・医療技術の専門医療行為で関わる医療ホスピタリティがそこでは発動されている。
「医療化された医療」のほとんどは素人でもできることであるが、素人に絶対的にできない閾で<わたし>を治療し、癒しへの自律性を開いてくれる真正の医療行為は、<わたし>に「触れて」くれるもので、「触り」「いじくる」ことからはほど遠い「述語的なアクション」である。数字や統計やただの症例事項ではない。統計数字などは医学的医療から、最も遠いものである。<わたし>を数量化などできないし、測定可能なものをいじっているだけの数字など科学ではない。例えば5%の死亡率などと言ったときは、実際の「4人に1人」では全くない。これはきっぱりと言っておかねばならない。
 感染が下火になってきたころ、医学的探究が幾分かはっきりし、ワクチンの効果が出てくるだろう。それは歴史が物語っている。
 感染者や彼らに対応する医療従事者たちを、社会の害とみなしてしまうような「医療化の道徳化」は大きな間違いである。命をかけた感染への闘いに、心から感謝することだ。医療は微妙なデリケートな問題であるが、「自分自身の自律性」から考えていくのが基本だ。
 書籍内容
▼毎日歯ブラシしても歯を失うのは何故? 坂井秀夫

▼医療と医療化との違い:真の医療行為と病/痛み/健康の自律性 山本哲士

笹島寿美インタビュー
▼日本の精神文化としての着物一衰退と未来

▼新型コロナウイルス感染症のパンデミックから一年余が過ぎた。
選択可能な未来へ向けて、いま、私たちが考えるべきこと 山本太郎

▼白内障手術ひとすじの意志とこころ:
患者のための世界最高峰の医療技術とホスピタリティー赤星隆幸先生に聞く

▼コロナ時代の認知症予防 西野憲史

▼述語制言語の日本語とコプラ【連載2】
「述格」と「陳述」 浅利誠

話せる日本語(2)
話せる日本語(3)
仏語原本著者/金谷武洋
英訳/フランス・クルチェ

【カラー特集】
着付けと帯結び 笹島寿美
写真・文 東海林美紀

【iichiko note】
大震災とコロナの場所 河北秀也
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