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2020年7月発売 
128頁 
定価:1,500円(税別) 





 COVID-19のパンデミック以降の世界をどう考えればいいのか?環境、場所、民俗、精神を文化学的に検証してきた本誌は、今一歩、現実へ踏み出していくつかの指標を問題提起しながら、これからの日本/世界づくりをなす上での本質指針と歴史規定的条件をクリアにし、物事をなす上でのスタッフ(素材)を提示していこうと考える。述語制様式の日本語と科学技術、そしてホスピタリティに続いて<資本経済>を、資本主義の概念的な曖昧さ、ソーシャリズムの実際的限界に代わってプロブレマティークする。
 商品経済も労働経済も産業経済も、さらには環境経済も、その地盤には<資本>が作用しているのに見失われている。<資本>は資金や資財ではない、個々における力能である。文化資本、象徴資本、社会資本、さらに場所資本、技術資本、言語資本、環境資本、自然資本など多様な資本が働いており、経済資本だけが経済を動かしているのではない。政治資本も統治資本、国家資本を場所資本から見直すべき地平に今やある。それは最低限のものをより多くではなく、固有の至高のものを目指す。ブルデュー社会学を超えるボルタンスキーやラトゥールやアーリ、さらにドンズロらの理論開示は、現実把捉の既存知識に対する知の資本を有しており、そこをもう一歩進んで深めていくことだ。「社会なるもの」に代わって「場所」を西田哲学から提起してきたが、近代次元を超えてく繋がり<資本>を「社会」「共同体」「コミュニティ」などの彼岸へ開くことであり、「資本/場所/述語制」の新たな概念空間において言説構築し、足元の現実をアクチュアルに拓いていくことだ。そのためにはまだまだ多くの検証を要する。
 「商品経済」「賃労働経済」(他律的社会経済)から、<資本経済>、個々人の自律力能を領有した<資本者 capitalian>の自己技術へとシフトする上で、<日本の文化資本/文化技術>の本質を文化的に開削していくことが要される。それは西欧的普遍性に代わりうる普遍性を有しているが、日本文化が情緒資本として感取されている状態を<知的資本>へと言説生産していかねばならない。またマネジメントは、ドラッカーが言うようにたまたま経済企業において活用・探究されただけで、総体的に開発適用されていくべきものだ。商品経済マネジメントが社会マネジメントに拡張されてきた、その限界を超えていく<資本経済マネジメント/場所マネジメント> であるが、「知識に対する知」の働かせ方である<知的資本 intellectual capital) の新たな構築なくしては不可能である。ワーク/技術に知識を応用する知識資本 knowledge capital のままでは、もはや現実に対応できず、自分の命を自分で守れない。マネジメントは自分の自分に対する自己技術である。他律技術優位への依存によって安全を保つ時代は終わったのだ。
 前向きのポジティブなことを考えているようでいて、実際には「意味されたこと=シニフィ エ」の旧態へ退行しているのに過ぎない状態なのは、「社会なるもの」の作用の効果である。近代知のこの産物を慎重にクリティカルに対象化していかないと可能条件をとり損なってしまう。パンデミックは、情報世界の情報流もあって世界中を不安と恐怖に陥れたが、医療行為と別ものの医療化が「社会」世界を一般化することによって、場所での出来事を抽象化してしまう社会統治技術そのものの不備性を露呈した。「商品経済」の社会市場を前提にした知識では対応できない現実が出現していることへの認識不足である。シニフィエから指針は出されえないし、抽象化した統計的数学からの予測は遡及的前提を正当化するものであって、科学ではない。近代知の限界が問われて半世紀も経っているのに、経済や政治を動かす知的認識が旧態のまま、未知なるものへの不安と推測を散布している。
 かかる現状に対して、新たな概念空間と自己技術へと知的資本が、近代エピステモロジーを突き抜けて進みいく回路と思考格子を、本誌はさらに明証に探究しつづけていきたい。
 書籍内容
▼ 新たな<資本経済>と場所:知的資本としての概念経済 山本哲士

▼ 移動論的転回:その視界一アーリを読む 吉原直樹

▼ アリは老いたるモグラを助けるか
アクターネットワーク理論で<資本>を発見する
伊藤嘉高

▼ 現代資本主義と都市空間の再編
L・ボルタンスキーにおける「社会的なもの」と「空間的なもの」
川野英二

▼ 資本主義、連帯経済、そして「田園回帰」
『資本主義の新たな精神』を縦糸として
立見淳哉

【カラー特集】
いけばなの今

いけばなに宿る精神性を探して
古典花道研究家 村井孝行
花人 杉謙太郎
写真・文 東海林美紀

【iichiko note】
2020年の場所

河北秀也
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