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2020年1月発売 
128頁 
定価:1,500円(税別) 





 「述語制」は、本誌が創出し提起してきた概念である。文化学を世界第一線の論者たちの参 画による言説水準からとらえながら、構造論以降の知的到達点を踏まえ、日本の歴史的蓄積で ある文化資本・文化技術から実際的な具体の物事の上で〈日本〉の普遍水準を発見してきた。 その地盤に〈日本語〉が、述語制様式の世界を構築していることが見出された。
金谷武洋の「日本語に主語はない」を契機に金谷特集をくみ、さらに三上章特集をくみ、日本語文法の誤謬を問い返す作業に入り、くわえて格助辞を突きつめておられる浅利誠氏の参画をへて、金谷氏とお二人に連載をしていただき、それは本へとまとめあげた。折しも藤井貞和氏が「文法詩学」をもって助動辞の根源的な見直しを刊行され、その確認をなした。この三者から、日本語それ自体を本質的に問い返す回路が開ける。他方、国文法の誤認が再認され続けていく様態を、主語制言語様式を集中化・統合している「国家資本」としてクリティカルに観ることを、わたしは国家論・再生産論において物事それ自体を見られなくする〈壁〉として明証化した。
 そして、述語制を浮き出させていくには、江戸期の富士谷成章、本居宣長・春庭、鈴木服たちにくわえて、松下大三郎、佐久間界、三上章の語法言説を領有していくことである。春庭『詞通路』『詞八街』を本誌で活字化した。「テニハ」論から「あゆひ」考察へ和語の解明は進んでいったが、そこが理論言説化されていない。さらに、明治期の言文一致の小説の動きが、翻訳や法文化を含み、主語制言語世界と対峙しながら口語文体を作り上げていく。そこに主語制言語様式への擬似転換がなされてしまう。言文一致と邦訳の歴史的考証はかなりしっかりなされているが、クリテリアがはっきりしていないため、せっかくの考証が言語理論へ生かされていない。ここは世界の一般文法と一般言語学への批判領有をもってしないと理論生産的にならない。西欧でさえ、品詞も疑われていれば、人称や主語さえ疑われている。
 基礎批判概念は、〈主語制言語様式〉と〈述語制言語様式〉とを対比的にクリテリアにおくことである。そして、述語制は、動助辞・静助辞の〈述辞体系〉を理論言説化していかないかぎり構築されない。助詞・助動詞としてこれを非自立語、付属語、概念がないと「助〜」としている現状は主語制概念空間にまだ止まっていることでしかない。述辞は統率的働きをする概念世界である。主語とされているものの方が従属語であるのだ。そもそも[subject]に「主語」「主体」など〈主〉を当てたこと自体が大誤訳である。助詞も[particle]が、冠詞・前置詞・接続詞・間投詞や接頭辞・接尾辞など日本語の概念空間とまったく違うものなのに、当てはめを仮構した。これを屈折語と膠着語の違いだなどと仕分けている限り、日本語の「述辞と語の間の<繋がり>」の高度な理論構造と構成はまったく把捉されない。それはコプラではない。コプラなど日本語には無い。
 述語制言語としての日本語は文化資本として技術や芸術、さらに政治的統治や経済的様式を決めている。思考技術は言うまでもない。西欧的普遍に対する類本質的な普遍である。
 『述語制の日本語論と日本思想』を第1巻として書き上げ刊行した、その2巻、3巻のほんの要点を今までのまとめから探究へのガイドとして同時期に概略指標しておく。松下がzero規準になる。おそらく10年ないし20年後には《述語制言語》は一般語となって当たり前になっていよう。そうならないと日本は危ういとさえはっきり言える。自分の使っている言葉を間違って理解している国がまっとうになるはずがないからだ。自分の言語を取り戻そう。
 書籍内容
文化資本としての述語制日本語 探究へのガイド―山本哲士
述語制様式の構成
述語制の初期条件へ
シニフィアンとシニフィエ、そしてシニフィアンス:原初条件から了解様式へ
述語制の関係規準① 日本語にコプラはない
述語制の関係規準② 場所の述語性、物・人の主語性、その哲学差異
述語制の関係規準③ Propositionと動詞
述語制の関係規準④ 述語的な動詞のシニフィアンス
述語制の関係規準⑤ 動詞と形容詞の区分はいらない
述語制の関係水準① 人称はない
述語制の関係水準② 主体=主語はない
述語制の関係水準:存在表現
述語制の関係論

*松下大三郎より述語制関係の成分関係
松下大三郎 述語制表象文法の規準
松下大三郎 述語制構造の基礎:原辞と詞論
松下大三郎 述語的表象構成としての「詞の相関論」:述部が統率する
松下大三郎 複層従属語:成分の間接関係
松下大三郎 成分の統合:「分主性」と「合主性」
松下大三郎 述語的表出素としての〈動・静〉助辞論:〈言表辞〉の論理
松下大三郎 静助辞
松下大三郎 動助辞、そして述語制の「格」の含蓄へ
松下大三郎 述語的表出の「相」:〈述語相〉の理論へ
松下大三郎 述語的表出としての活用
松下大三郎 松下の「動詞の理論」:述語的動詞の配置へ

佐久間鼎の言語理論
佐久間言語理論の本質相
佐久間鼎 日本語の論理性と情動性
佐久間鼎 否定表現の問題:別様の提示と「は」

三上章による述語言語体系への言説転移
『現代語法序説』における言語言説地盤の転移
主語概念言説の地盤換え:文法と構文と論理学
三上章 格助詞と<格>の布置
三上章 敬語法:述語的相手の設定
三上章 活用形の機能
松下・佐久間・三上からの述語制様式の言語理論へ
述語的了解の関係水準:金谷武洋の述語的日本語論
述語的<活用>の言説地盤
述語制の世界へ

【カラー特集】
森とともに暮らす
写真・文 東海林美紀

【iichiko note】
二本木、四本木、六本木という場所 河北秀也
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