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 トップページ >> 書籍紹介 >>本居春庭『詞八衢』−述語制日本語をとりもどすため2ー



2019年7月発売 
128頁 
定価:1,500円(税別) 





 本居春庭の第二弾『詞八衢』特集である。これで、前号の『詞通路』とともに春庭の基本的な書を活字で読めるようにした。春庭研究で大切な、中村朱美氏の貴重な論考を再録掲載させていただいた。
 富士谷成章、本居宣長、そして春庭、御杖、柴田常昭さらに鈴木琅など、近世の文法言説を述語制言語の基本にすえて、山田孝雄、松下大三郎、佐久間鼎、三上章を再考し、そして現在の藤井貞和、金谷武洋、浅利誠を組み込んでいくことだ。近世文法も、東條義門で転換が始まっていくゆえ、以前の契沖や真淵との非連続も含め、ただ連続系譜としては扱えない。非連続的に何がなされていったのかを、緻密に交渉せねばならない。こうした言説生産は、橋本文法や時枝文法などではない。まだ、日本語に主語がある、主語が省略されているなど西欧文法基準の誤った見解を、日本語に主語などないことを知っていながらなし続ける愚行は、1日でも早く無くならないと、日本のこれからの未来はないのは確かである。
 時代の大転換の中で、国家資本という人々の認知・認識諸構造の集中化した近代の主語制言語様式の統合を、述語制言語様式へ組み替える実際的な多様な動きがなされていくことで、日本の新たな可能条件がいろんな分野で開かれていきうる。述語制言語は、世界的にも普遍なことで、日本語にはその優れた遺産が日本の文化資本としてあり、かつ、述語制表出は、美術や道具、着物、建築さらに武術などの術技に蓄積されている。それらは分野ごとに分断されているが、本質様態として統合的に構成されていくことだ。無くなりつつある危機にも瀕しているがゆえに、体系的言説を生産し、文化資本・文化技術を拾い上げ、新たな経済や環境、そして統治技術にも活用していくべきことである。技術科学も情報技術を含め、〈非分離、述語制、場所、非自己〉の日本原理から新たな開発がなされえていくであろう。
 潜在する日本の文化資本の質は、西欧的普遍化と共存しうる高度なものであるが、理論的に概念化されえていない。多様な遺産があるにも関わらず、対象化しきれていないのだ。とりあえず、本誌は、「非分離・述語制・場所・非自己」の概念空間を、西欧的な「主客分離・主語制(主体)・社会・自己(自我)」に対抗して抽出したが、この生産的な相反共存が大事なことで、前者が自覚されていないことが問題である。概念空間は、コード形態を転じ、対象を転じ、技術を転辞させうるもので、思考形式の「新しい知」(しかし古くからある)として再構成しうるものとなる。それは、商品に対する「資本」の様態であり、サービスに対するホスピタリティの関係技術であり、AIなどの妄想にきちんとした技術対応を生み出していくものである。経済の閉塞性は、述語的資本によって新たな次元を開きうるし、統治技術は社会統治に代わる場所統治において、環境を真に活用しうるものになる。
 探究はまだひたすら続く。
 書籍内容
▼『詞八衢』本居春庭

▼詞のやちまた序

▼詞八衢上
四種の活の図、ア行の図、カ行の図、サ行の図

▼詞八衢下巻
タ行の図、ナ行の図、ハ行の図、マ行の図、ヤ行の図、ラ行の図、ワ行の図

▼『詞通路』・「詞の自他の事」の再評価
 ―ヴォイスによる動詞論の試み―中村朱美

▼本居春庭による『あゆひ抄』書写資料の発見
 ―『(仮称)語法手扣』の新たなる位置付けと翻刻―中村朱美

【カラー特集】
「サウナと北欧の夏」
写真・文 東海林美紀

【iichiko note】
100年前の場所 河北秀也
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