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2018年1月発売 
128頁 
定価:1,500円(税別) 





 ピレネー山脈の中の、壮大なピレネー犬の実録取材の写真集である。
 人間と動物を対立させて人間性を説く論法は、動物を野獣とみなし、その野獣性からの離脱に人間の出現をみなすしかたであるが、人間を動物に比して同質のように説くしかたもある。家畜化された動物だけではない、野生の動物も、人の暮らしに役立ってきたのは、食や衣服さらには住居にまで使われてであった。共存、敵対、殺傷、攻撃など、その相互関係の長い歴史および現在が見直されるべき次元に、人類はきている。森から動物たちが都市へ迷い出て、農作物を荒らし、また危険だと追い回される現在だ。
 動物と人との共存は、今や、都市化された世界ではペットとなっているが、人類の生存にとって動物の歴史と存在は不可避の関係にある。わたし自身の愛犬ピレネー犬の2代目が腫瘍で2匹とも亡くなってしまったとき、あまりの哀しみに、その故郷のピレネー山脈まで足を運んでルーツを見たいと、何の手がかりもなく探し当てた、その放牧の壮大な光景は、百匹を超えるであろう羊の群れをピレネー犬たちが人の命令なしに自分たちだけで先導し、引き連れて、山を降りて、羊たちに牧草を食べさせ、その間、のんびりと過ごし、水浴びまでしながら、そして、羊たちを連れて山へ登って帰る現場であった(本誌121号参照)。その感動から、どうしても、もっとしっかりとその生態・実態を知りたいと思っていたところ、写真家の東海林美紀氏が関心を抱いてくださり、調査を兼ねての現場での実録を撮ってくださった。ほとんど手がかりがない状態を、氏は一つ一つ追っていきながら、その真っ只中に入って、貴重な記録を掴んでくれた。羊が転げ落ちて死んでしまうような山を命がけで登り降り、放牧期間誰も行かない山頂の奥深くまで、まるでターザンのような羊飼いの人が放牧中に住む小屋にまで、たどり着き、村人たちから尊敬されている彼らの実態も掴んでくれた。彼らへの生活物資は、ヘリコプターによって空から落とされる、そうした山奥の山中である。おそらく、世界で初めてともいえる記録であり、現地の関係の方々もこの特集を待ち望んでいると聞く。数千枚の記録は、本号だけに収まるものではないゆえ、今回はピレネー犬を主にし、次回はそれとともに関係している方々を主に放牧文化が持続されている現状を伝え、同時に日本の側でピレネー犬の状態がどうであるかを、フランス側も知りたいということなので、伝えていきたい。
 何百種もいる犬種の中で、警護犬も数々いるが、ピレネー犬は、羊たちの中で生き暮らしている極めて確な確確であり、危険な動物と人の側との間に入って、羊・人を守る。そのけなげなあり様の動物文化は、人や生存文化がいかなるものであるのかをも照射してくれる。それは、数千年の歴史がある。生態系が、産業化の中で破壊されていく現代で、かすかに残されたヨーロッパの放牧文化であるが、このおとなしい力のある大型ビレネー犬のあり方は、貴重な世界であり、感動的である。
 本誌では、初めての写真集特集の形式にした。ペット犬とは違って、泥だらけになりながら、彼らは人間への約束をしっかりと守り続け、羊たちを家族として、羊たちからも信頼され、熊や泥棒たちから、自らの力と意志で守っている。生まれたばかりの愛らしい子犬たちは、人の手から離されて羊たちの群れの中で成長して、偉大なるパトゥーPatouになっていく(100-5頁)。感動的な生の姿を味わっていただきたい。偉大なる動物たちに感謝! という姿勢で、動物文化を考え、人間のあり方を考えていきたい。
 書籍内容
▼ピレネー山脈の放牧文化とピレネー犬(1) 東海林 美紀

▼ 動物哲学と動物の文化学へ(1) 山本 哲士

【カラー特集】
ピレネー山脈の放牧文化とピレネー犬(1) 写真・文 東海林 美紀

【iichiko note】
ナバホの場所 河北 秀也
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