特集「現代都市の社会学」について
特集企画:内田隆三
今回の特集企画は、〈東京〉という名の都市の現状について、具体的かつ多角的に議論してみたいという問題意識に端を発しています。21世紀に入り「都市再生」の掛け声とともに、東京都の人口は急速に増えていきました。日本の人口減少が問題化されるなか、人々が〈東京〉へ吸い寄せられたわけです。この動的な社会過程で〈東京〉と呼ばれる都市は一体どんな現実を孕み、また、その現実は地方の現実や国土全体の現実とどんな関係で結ばれているのか?−−−そんな疑問がこの特集を動機づけています。
ある時期から、〈東京〉はひとつの総体として捉えることが難しく、むしろ種々の断片を通して寓喩的にしか語りえない何かであり続けています。〈東京〉を切り取る寓喩的な断片があれこれ恣意的に浮上しますが、総体としての〈東京〉はいよいよ知りがたく経験しがたいものとなっています。20世紀末以降のアニメ・漫画・小説などに〈東京〉はどれほど廃虚の形象を投影したことでしょう。それらの物語言説は〈東京〉の死を物理的にイメージしましたが、このイメージの下地には〈東京〉の捉え難さが観念として横たわっていたのかもしれません。
今日、〈東京〉への集中・集積といった趨勢はどうも新たな次元に到達しはじめており、それは〈東京〉の位置や意味や機能の変化と同時に、〈東京〉が抱える矛盾や空洞の特異な状況を示唆しているように思います。今回の特集が、これらの問題を深く考える糸口になればまさに幸いです。
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