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2014年10月発売 
128頁 
定価:1,500円(税別) 





 日本橋は、Nihonbashiと記すのか、それともNihombashiなのか? 英語では、mpbの前はmであって、nではないという規則性があるようで。さて、地下鉄等の表記はどうなっているのか、ご自分で探られたし。
 ここには、いくつもの問題が重なっている。ローマ字表記は英語表記に従うべきなのか、そしてもっと根底では、「ん」という音や表記を日本語で認めるのか否かという、宣長と秋成が論争そたことが、いまの国名「日本」の「にほん」なのか「にっぽん」なのかにも関与して、やっかいだ。スポーツの応援で「にほん」では力がはいらない。「にっぽん!にっぽん!」とした方がリズム、躍動がとれる。だが、講演などで「にっぽん」とするとどこか危うそうで、「にほん」と静に発した方がいい。本誌は、宣長に反して「ん」をきたないとはせず、その表出力を意味あるとし、さらに躊躇無く「ん=n」と記す。
 この数年、「日本」考察に専念していて気づいたことは、日本には相反的なものを共存させる智恵があるということだ。それを対立させたり、争わせたり、または一義性へ一元化したりせずに、相反したまま共存させる「和」の高度な技術をもちえている。古事記と日本書紀の二つの異なる設計原理を古代から確立っせて、天なるものと地なるものを共存させる多元的な方法を一元的なものと共存させる表出技術をもっている。どうもそれが、近代西欧の主客分離の二元論を受け止めうる力になったようにおもえる。主客分離は主客非分離の日本の本質原理とまったくちがうのに受容しえたのは、「異なるもの」を受け入れる受容力・寛容力ではなく、相反するものを共存させる積極的な力であるように思われる。
 日本橋は、まさにそういう場所として、江戸という歴史的なものを引き継ぎながら同時に「TOKYO」という近代化されていくものをうけとめた、その相反性がなりたっているはずなのに、江戸的なものの姿があまりに見えなくなってしまっている。だが、場所であるかぎり、それは絶対消滅させることはできない。潜在的に「江戸の文化的・歴史的規制性」は必ずあるはずだ。それをどこまで自覚し、うきあがらせ、よびもどし、最先端日本と共存させうるかが、これから日本橋が活性化するか否かにかかってくる。岡本哲志氏の日本橋調査は、その基本規準となるものを明示してくれる。欧米的なスマートシティ化がなされるならそれに比して同時に江戸的なもの(それは、小田原後北条の東国統治に徳川統治が乗っかった領土的場所である)をしっかり甦らせないと、都市設計としてかならず過つ。しかも、それは西の「京都」との相反共存を設計するものになっていかねばならない。それによって、あちこちの場所の設計モデルとなりうる。ところが、京都も日本橋も、歴死文化の資本が希薄化されてしまっている。場所の「カミ・タマ」がなおざりにされているからなのだが、すると悪しき心的なもの(悪霊)が跋扈する(その近代的なものは経済的に儲かれば何をしてもいいという横暴さになる)。
 日本人は悪しきものにたいして民俗慣習的に、それをホスピタリティ的に歓待し鎮め静におくりだした。江戸は神社・仏閣をきちんと配備した(自分の都合で勝手に移転していない)、その幻想技術を場所においては軽んじてはならない。こうした相反の心的かつ統治的な共存の幻想技術の物質的で象徴的なイメージが、日本橋では、着物を着て歩いている人が洋服を着て歩いている人と半々になっている状態として想定できる。幻想技術は、信仰の問題ではなく、述語的心的表出の象徴化を物質化する述語的場所の問題である。そこで、幻想技術と経済技術の相反共存をなしうるのが環境技術の根本に捉えられることだ。先人はその智恵をもっていた、それを無視することで、自然災害がとんでもない被害を増大させてしまうことは、この間いやというほど被っている。
 日本人の文化の智恵・技術をしっかりと学び直していくときである。それは、わたしたちがぼんやり感じている以上に、非常に高度である。
 書籍内容
0.はじめに
1.現在の東京の都市空間
2.江戸の基層から何が見えるのか
3.江戸を貫く中心軸と空間形成への織り
4.都市機能としての神田上水・玉川上水の役割
5.近世江戸における町人地の街区と町割りの変容
6.明治期における日本橋の河岸地構造の変容
  (明治初期と明治末期との比較)
7.祭りにより、ハレの場を演出してきた日本橋の風景
8.おわりに:将来の日本橋の場所設計をイメージするために

【カラー特集】
氷河期から現在まで、日本橋の歴史を駆け巡る------岡本哲志

▼【iichiko note】
67歳の場所II 河北秀也
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