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 トップページ >> 書籍紹介 >>オクタビオ・パス生誕100年



2014年4月発売 
128頁 
定価:1,500円(税別) 





 偉大な存在は、死後も日がたつにつれて、さらに偉大となっていく。
 オクタビオ・パスが生まれて百年、メキシコにおける存在がさらに大きくなるだけではない。
世界でそのその存在はますます大きくなっていく。欧米世界で、大知識人の時代が終わったといわれたりしたが、それは西欧ではなく、アジアの吉本隆明であり、ラテンアメリカのオクタビオ・パスの死でもって、終わった。世界線からみれば、そういうことになる。文学、歴史、思想、哲学に通じ、しかも詩人であること。大きな思想であるからといって、イデオロギー表象するのではなく、個々人の存在へとどいてくるもの、ものごとの本質を射ぬいているものだ。
 いま、ヨーロッパ的段階の近代が、さまざまな局面で不可避の崩壊をはじめているとき、〈アジア的〉段階での存在意味が見直されていくのだが、それは、長い歴史蓄積と言語的文化表出が、述語的になされてきたからだ。それは、近代の主体主義や客観主義がひろいえなかったものである。存立原理がまったく違う。近代は、主客分離の閾へいくほかに道がなかった、世界線でみれば辺境の出来事が、あたかも普遍であるかのようにふるまい、帝国を擬装した拡張主義へといくほかなかった、その基軸となったナショナルな編制が、いま崩れさりはじめている。アジア的なものは、拡張しようとしてもしえなかった、拡張はまちがいであるからだ。場所が空間へと抽象化されたときに、科学と経済の拡張が踏み出されていってしまった。
 バナキュラーな場所から世界へ通底する、それが本質的にまっとうなことであり、そのとき非分離の規制原理が作用している、分離へいくのではない、述語的な表出文化となって構成されている。
 パスは、そこを「普遍」の境界においてひきうけている。そこに、近代主体や客観的歴史をおいていない。〈愛〉をおいている。〈一〉をおいていないのだ。ソーシャルなものへ均質・均一化される愚行を知り、個々人の自律が自在に動きうる、場所が存立しうるパブリックな可能閾を開いている。ナショナルなものへ統合されるベクトルではない普遍を開いている。というのも、ラテンアメリカは、ナショナルな性向編制を西欧よりも早く歴史的に開始しながら、その限界を現実的なものとして背負いこんだ、それゆえ欧米規準からすると不完全なものと裁断される次元を、逆に、逆転する力として先行的にもちえている。それが、あちこちで、象徴的・現実的に目に見えるものとして噴出してくる。日本にもあるのだが、日本では目に見えなくなっている。
 アジア的ということの多彩な表出様態があるのだが、そのなかで、日本的位相とメキシコ的位相とが相互交通する、その閾にひとつの希望の道筋が、確実にあるのだ。パスは、そのはしわたしを本質的に深くなしている。パスの詩が、東北の被災地の中で、静かに読まれた。それは『太陽の石』(EHESC出版局)として、メキシコ政府、在日メキシコ大使館の協力のもとにうみだされた。本誌のパス特集は、その派生として編まれた。
 メキシコのパスの家で、本誌はインタビューをなした(1987年4号)、このインタビューはパス全集に収録されているが、その鮮烈な出会いは、いまなお鮮明にわたしの像に残って輝きを失っていない。
 書籍内容
▼ オクタビオ・パスと文化的解放 ガブリエル・サイード/訳:阿波 弓夫
▼ 「PIEDRA DE SOL(太陽の石)」の評注 ラモン・シラウ/訳:三好 勝
▼ オクタビオ・パスと文化的解放 ガブリエル・サイード/訳:阿波弓夫


▼ オクタビオ・パスの詩
『激しい季節』より
出口はない? NO HAY SALIDA? 訳:伊藤 昌輝

『内なる樹』より
コスタス KOSTAS
ジュアン・ミロの寓話 FABULA DEJOAN MIRO
マルセル・デュシャンのドゥルシネア姫 LA DULCINEA DE MARCEL DUCHAMP
訳:鼓 直

▼ EL LABERINTO DE LA SOLEDAD 訳者が語る
オクタビオ・パスとメキシコのアイデンティティの探究 吉田 秀太郎
オクタビオ・パスと『孤独の迷宮』 高山 智博
オクタビオ・パスを日本へ 熊谷 明子

▼ 4人のエスピリトロンパ(1)
---日本におけるオクタビオ・パスの知的反響--- 阿波 弓夫

▼ CONVERSACION TRAS LAS AZALEAS
Octavio Paz y el arte,un testimonio personal
アザレアの咲く庭の語らい---オクタビオ・パスと美術、個人的な証言
アルベルト・ルイ=サンチェス

▼ Octavio Paz,editor
雑誌編集者、オクタビオ・パス エンリケ・クラウセ

▼ 【連載 中村三春のテクスト文芸学 第8回】
太宰治『新ハムレット』の「愛は言葉だ」---パラドクシカル・デカダンス2
中村 三春

▼【カラー特集】
本場奄美大島紬

▼【iichiko note】
コンピューターの場所 河北秀也
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