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2010年4月発売
128頁
定価:1,650円(税込)

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愛の純粋性も正義の純粋性もない。かつて、江藤淳は戦後の正義なるものが、いかに偽物であるかを語り、自分は私情の方を信じるとしたが、理念は現実を裏切る以上に、理念として未熟なものが多いということだろう。幸福を求めることも「安楽」を求めることへ転じ、消費商品で満たされる幸福と自由とへ転じられてしまった。そこからの脱皮が、いま求められている。「生き方」は、個人の主語的な主体の問題ではない。生き方がなされる場所の問題である。場所の理念がないところに、真の理念は成り立ちえない。
場所なきビジョンは、理念なりえない、期待の構想でしかない。想像の場所、家庭の場所、市民の場所、商業の場所、産業の場所、という世界の中で、矛盾と判断、批判と妥協が多様になされていく。そこで、愛をどう考え正義をどう考えているかが、それぞれ違っていく。なにを「偉大」と感じているかで、それぞれの生き方が違ってあることを、リュック・ボルタンスキーは論じた。
愛や正義の観念・幻想は、社会的な諸関係や地位によって規制される。産業社会で、人は、他律技術を磨きあげることはするが、自己技術を自己満足の追求へと切り替えてしまっている。つまり、観念・幻想へと転じてしまっているのだ。非自己の感覚が働いていないからだ。
愛も正義も、実は自己技術である。正確には、述語的な場所における非自己の自己技術である。そこを考えていく手がかりを本号ではくんでみた。
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書籍内容 |
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▼『日曜日の電話』における愛のメッセージ
リュック・ボルタンスキーほか 訳:三浦直希
▼ミハイル・ブルガーコフとグスタフ・マイリンク(後編)
ボリス・ソコロフ 訳:大森雅子
▼ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』初期稿より 宮澤淳一
▼【連載 中村三春のテクスト文芸学 第1回】
村上春樹『1Q84』論(Book1・Book2)歴史の書き換え、物語の毒
中村三春
▼【連載第2回】矢野雅文の『非分離の科学』の頁 矢野雅文
▼場所ホスピタリティの観光学:ホスピタリティ・ツーリズムの設計へ
山本哲士
▼【カラー特集】ホスピタリティ観光学:スイス・プラハ
▼東京スカイツリーの場所 河北秀也
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