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2013年2月11日発売 
280頁 
定価:本体3,000円+税 



 本書は、「文学」を生命論的考察の対象として位置づけるための試論である。啓蒙的・批判的理性による現実認識の言語的表象領域として「文学」を実在論的に位置づける近代主義的文学観においては、「文学」はむしろ批判的認識の対象であるはずの歴史の力学に取り込まれ、歴史叙述を構成するイデオロギーが「文学」領域へ侵入する。〈私〉性はイデオロギーを受け入れることで〈公〉的領域に引きずり出される事になるだろう。それこそが近代的個人の成立だとする近代主義と、まず手を切らなければならないのだが、この喫緊の課題の解決は思ったほど容易なことではない。
 西田幾多郎、田辺元、吉本隆明、太宰治、小林秀雄、志賀直哉が描こうとした世界を、歴史的世界における文学の身体性によって切り結ぶ。
 書籍内容
▼はじめに 文学の身体と言語
 I 一九四〇年前後
 II 西田哲学における歴史的身体
 III 下村寅太郎と坂口安吾
 IV 中島敦に寄せて

▼第一部 文学的身体と歴史
●第一章 太宰治・敗戦・田辺元
 I はじめに
 II 主体の憂鬱
 III 許されない問いを問うこと
 IV 田辺・『展望』・太宰
 V 所有と権力の脱構築

●第二章 歴史のポイエーシス
 I 語り得ぬもの
 II 知識人論
 III 転向論
 IV 語ることと沈黙すること
 
●第三章 吉本隆明の対偶的思考
 I はじめに
 II 沈黙の意味
 III 理論の落丁
 IV 擬制の終焉
 V 幻想の中心

▼第二部 生成する文学的身体
●第一章 文脈形成行為と公私の再編成

 I はじめに
 II 透谷と晶子の文脈
 III 公私再編とジェンダーの文脈
 IV「夕鶴」の私秘性

●第二章 痕跡の所有
 I 他者の痕跡
 II 意味の所有
 III 理論負荷性とアスペクト転換
 IV言語史と文学史

●第三章 疎開者小説の可能性
 I 疎開者小説の問いかけるもの
 II 〈正しさ〉とは何か
 III 倫理と経済

▼第三部 文学的身体の自画像――志賀直哉と小林秀雄
●第一章 身体性と暴力

 I「剃刀」
 II 「クローディアスの日記」
 III 「范の犯罪」
 IV「児を盗む話」

●第二章 沈黙する志賀直哉
 I 文学の身体性
 II 「孤児」
 III 「小品五つ」
 IV「佐々木の場合」

●第三章 流れを遡る
 I はじめに
 II 視界の限界
 III 不可視の流れ
 IV 死と係りつつ生きる

●第四章 「眠られぬ夜」の夢と現実
 I はじめに
 II 夢と現実
 III 決定論的自然観
 IV 思想家の私小説

●第五章 「おふえりや遺文」論
 I 〈語る主体〉
 II 〈語り〉の構造
 III 作品の大枠と原作との整合性

●後記

●初出一覧
 著者プロフィール
山崎正純(やまさき まさずみ)
1960 年生まれ。九州大学文学部卒。同大学院博士後期課程中退。大阪府立大学人間社会学研究科教授。博士(文学)。専門は、日本近代文学、比較文学。著書に『転形期の太宰治』、『戦後〈在日〉文学論』、『丸山眞男と文学の光景』(以上、洋々社)など。
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